データで見るNBA

NBAを分析するブログです。

3Pが得意なチームは強いのか(PO編)

前回に引き続き3Pの分析をしてみます。今回は2018-19年シーズンのプレーオフ(ファイナルを含む)のスタッツを使用して、3Pとプレイオフ上位進出の関係性について考察していきます。

 

1. プレーオフとレギュラーシーズンの3Pスタッツの比較

 下の表は前回の投稿でも使用したレギュラーシーズンの3Pスタッツです。

Team

3P

3PA

3P%

League Average

11.4

32

35.5%

Top 10

12.42

34.52

36.0%

Mid 10

11.05

30.68

36.2%

Bottom 10

10.61

30.82

34.5%

 

次にプレーオフの3Pスタッツの平均です。

Team

3P

3PA

3P%

PO Average

10.9

32.5

33.6%

試投数は大きな差がないですが、成功数と成功率はレギュラーシーズンと比べて低くなっています。プレーオフではディフェンスが厳しくなり、各チームが徹底的にスカウティングをして簡単にシュートを打たせないように対策をしますので、この数字は納得できます。レギュラーシーズンとプレーオフは別物だということを再認識させられます。

 

2. 各チームの3Pスタッツ

 次に各チームの数字を見ていきます。

Team

Game

Overall

3P

3PA

3P%

Result

TOR

24

16-8

11.9

34.5

34.6%

Champion

GSW

22

14-8

12.2

32.7

37.2%

Finals

MIL

15

10-5

12.8

38.1

33.6%

Conference Finals

POR

16

8-8

11.8

32.8

36.0%

Conference Finals

DEN

14

7-7

9.6

27.8

34.4%

2nd Round

PHI

12

7-5

9.4

28.4

33.1%

2nd Round

HOU

11

6-5

15.6

42.7

36.6%

2nd Round

BOS

9

5-4

11.3

33.0

34.3%

2nd Round

SAS

7

3-4

6.7

19.9

33.8%

1st Round

LAC

6

2-4

11.5

31.7

36.3%

1st Round

BRK

5

1-4

11.0

34.0

32.4%

1st Round

OKC

5

1-4

10.4

31.4

33.1%

1st Round

ORL

5

1-4

10.4

34.8

29.9%

1st Round

UTA

5

1-4

9.4

35.8

26.3%

1st Round

DET

4

0-4

11.0

33.3

33.1%

1st Round

IND

4

0-4

10.0

29.8

33.6%

1st Round

セミファイナル以上に進んでいるチームのほとんどは試投数、成功数、成功率の全てで平均以上の高い数字を記録しています。 レギュラーシーズンでも3Pを多用していないDENとPHIはプレーオフでも3Pスタッツは低いですが、セミファイナルには進出できています。どうやらインサイドとミドルレンジ中心でもファーストラウンドは勝ち上がれるようです。

 

赤い線が成功数の平均、黄色い線がファーストラウンドを勝ち上がる4勝のライン、セミファイナルを勝ち上がる8勝のラインです。

f:id:basketballanalysis:20200920205758p:plain

カンファレンスファイナルに進出した4チームは全て成功数が平均以上です。惜しくもセミファイナルで敗退したPHIとDENは平均以下なので、ベスト4に入るためには3Pの改善が課題となりそうです。

もう1つ注目したいチームがダントツの成功数を誇るHOUです。3P全盛の現代NBAにおいても圧倒的な3Pだけでは優勝を狙えないことがわかります。

 

3. 3P優等生のHOU

 HOUの各シリーズでのスタッツを見てみます。

ファーストラウンドのUTA戦では3Pで圧倒して勝ち進んだことがわかります。

 

3P

3PA

3P%

HOU

15.4

42.2

36.5%

UTA

9.4

35.8

26.3%

 

セミファイナルのGSW戦でも3Pのスタッツで圧倒していますが敗退してしまいました。

 

3P

3PA

3P%

HOU

15.8

43.2

36.7%

GSW

11.5

33.2

34.7%

プレーオフではディフェンスが厳しくなるので、勝負所でのドライブ、ミッドレンジジャンパー、ポストプレー等の2Pがやはり重要になってくるのでしょうか。

 

4. 勝負を分ける2P

HOUの各シリーズでのフィールドゴールと2Pのスタッツを見てみます。

勝ち進んだUTAとのシリーズでは2Pの成功数はUTAの方が上ですが、成功率はフィールドゴール、2PともにHOUが高いため、全てのショットでHOUが高確率だったことがわかります。 

 

FG

FGA

FG%

2P

2PA

2P%

HOU

36.6

84.2

43.5%

21.2

42

50.5%

UTA

34.6

86.4

40.0%

25.2

50.6

49.8%

 

次に問題のGSWとのシリーズですが、フィールドゴール、2PともにGSWが高い確率で決めています。HOUは逆に3Pしか攻め手がなく、試合の重要な局面でも3Pに頼らざるを得ない状況だったことが想像できます。

 

FG

FGA

FG%

2P

2PA

2P%

HOU

37.7

83.5

45.1%

21.8

40.3

54.1%

GSW

40.8

86.8

47.0%

29.3

53.7

54.7%

 

2Pの重要性についてはファイナルのスタッツでも確認することができます。

TORとGSWのファイナルはともに3Pを得意とするマッチアップでした。下のスタッツの通り、両チームとも厳しいディフェンスにも拘わらず、平均以上の高い3Pスタッツを記録しています。

 

3P

3PA

3P%

TOR

12.0

34.3

35.0%

GSW

12.7

33.5

37.8%

 

フィールドゴールと2Pともに優勝したTORが高い数字を記録しています。TORにはミドルレンジが得意なKawhiやインサイドでも勝負できるGasol、Ibakaがいました。

 

FG

FGA

FG%

2P

2PA

2P%

TOR

38.3

84.3

45.5%

26.3

50.0

52.7%

GSW

36.7

81.8

44.8%

24.0

48.3

49.7%

 

5. 結論

レギュラーシーズン同様に、プレイオフでも3Pを多用し、高確率で決められるチームの多くが上位に進出することがわかりました。DENやPHIといった3Pを多用しないチームもありますが、優勝を狙うには3Pの向上がカギとなりそうです。ただHOUのように3Pだけに特化してもダメで、むしろプレイオフでは高確率の2Pが勝負を左右しそうです。現代NBAでは3Pは必要条件であって十分条件にはなり得ないと言えそうです。

3Pが得意なチームは強いのか(RS編)

近年のNBAはGSWやHOUに代表されるような3Pを多用するチームが増えており、2000年代からNBAを見ていると、バスケそのものがここ十数年で大きく変化したと感じます。今回は2018-19年シーズンのスタッツを使用して3Pと勝敗の関係性について分析したいと思います。プレイオフとの比較もしたいので、今回は昨シーズンのレギュラーシーズンのスタッツを使用します。

 

1. 勝敗との相関とリーグ全体の傾向

3Pは1試合当たりの成功数、3PAは1試合当たりの試投数、3P%は3P成功率を表します。

相関係数を使用して各チームの3Pスタッツと勝率との相関を調べると、以下のような数字となります。

 

3P

3PA

3P%

W/L%

0.487222

0.312689

0.54186

相関係数は1に近いほど相関が強く、0.4以上であればそれなりの相関があると判断できます。成功数、成功率は0.4以上のため勝率との相関が確認できます。成功数よりも成功率のほうが勝敗への影響度が大きいようです。

 

次にリーグ全体の平均と上位・中位・下位チームそれぞれの平均を見てみます。

上位10チームだけが試投数、成功数ともに平均を超えていますので、やはり3Pをいかに多く打って多く決めるのかが上位進出のカギになりそうです。一方で成功率を見ると、中位と下位の間の乖離が目立ちます。プレーオフ進出を争うチームにとっては成功率の向上がより重要になってきそうです。

Team

3P

3PA

3P%

League Average

11.4

32

35.5%

Top 10

12.42

34.52

36.0%

Mid 10

11.05

30.68

36.2%

Bottom 10

10.61

30.82

34.5%

 

2. 上位10チームの3Pスタッツ

レギュラーシーズン勝率Top10の3Pスタッツを見てみます。

DEN、POR、PHIを除く7チームは試投数、成功数ともに平均以上となっていますが、これら3チームのように3Pを多用せずインサイドやミドルレンジでも勝負できるチームが存在することも確認できます。DENにはJokic、PORにはNurkic、PHIにはEmbiidといった優れたインサイドプレーヤーがいますので、この数字も納得できます。それでも全体で見ると3Pを多用するチームが多く、かつ成功率も高いのが印象的です。

W/L% Rank

Team

3P

3PA

3P%

1

MIL

13.5

38.2

35.3%

2

TOR

12.4

33.8

36.6%

3

GSW

13.3

34.4

38.5%

4

DEN

11.0

31.4

35.1%

5

POR

11.0

30.7

35.9%

6

HOU

16.1

45.4

35.6%

7

PHI

10.8

30.2

35.9%

8

UTA

12.1

34

35.6%

9

OKC

11.4

32.6

34.8%

10

BOS

12.6

34.5

36.5%

 

3. 3P試投数、成功数Top10のチーム

それでは本当に3Pを多用すれば勝てるチームになるのかという疑問が出てきます。バスケの勝敗には3P以外にも多くの要素が勝敗に影響しますが、今回はあくまで3Pにだけフォーカスして論じます。

まずは成功数Top10を見てみます。

10チーム中8チームがプレーオフ圏内ですが、ATLとDALだけが下位となっています。 

3P Rank

Team

W/L% Rank

3P

1

HOU

6

16.1

2

MIL

1

13.5

3

GSW

3

13.3

4

ATL

26

13

5

BRK

14

12.8

6

BOS

10

12.6

7

DAL

23

12.5

8

TOR

2

12.4

9

UTA

8

12.1

10

DET

16

12.1

 

次に試投数 Top10です。

こちらはATL、DAL、CHOがプレーオフ圏外です。特にATLとDALは3位と4位なので3Pを打ちまくっていますが勝てません。

3PA Rank

Team

W/L% Rank

3PA

1

HOU

6

45.4

2

MIL

1

38.2

3

ATL

26

37

4

DAL

23

36.6

5

BRK

14

36.2

6

DET

16

34.8

7

BOS

10

34.5

8

GSW

3

34.4

9

UTA

8

34

10

CHO

18

33.9

3Pを多く打って、多く決めるチームのほとんどがプレーオフに進出していますが、必ずしもそうなるとは言えないことをATLとDALが証明しています。

 

4. 3Pを多く決めても勝てないチーム

ATLとDALの3Pスタッツを見てみます。

冒頭でもプレーオフ進出には成功率がカギになると言いましたが、予想通りATLとDALの成功率は平均以下でした。

Team

3P

3PA

3P%

ATL

13

37

35.2%

DAL

12.5

36.6

34.0%

 

赤線が成功数の平均、オレンジ線がプレーオフ進出ラインの勝率5割です。

成功数が平均以上のチームが多く右側にいる中で左側のATLとDALが目立ちます。

f:id:basketballanalysis:20200919155801p:plain

 

赤線が成功率の平均、オレンジ線がプレーオフ進出ラインの勝率5割です。

成功率が平均以上のチームがほとんど右側のプレーオフ圏内にいるので、ATLとDALは成功率の向上が課題となりそうです。

f:id:basketballanalysis:20200919170122p:plain

 

5. 結論 

 今回の分析で上位チームの全てが3Pを得意としているわけではないが、得意とするチームのほとんどは最低でもプレーオフ圏内に入れることがわかりました。3Pを多く決めるチームでも下位のATLやDALといったチームもありますが、こういったチームは成功率を向上させることで上位に進出する可能性が高まりそうです。